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●社長三代記
福富電機工業は創立十周年を迎え、関西から先代社長未亡人で会長のヨネと令嬢トメ子も列席して、盛大な祝賀会が催されていた。その後、トメ子が撮影した8ミリ映画の映写会が催され、先代社長に怒鳴られてペコペコしている啓太郎の惨めな恰好が映し出された。そんな中にあって、大場営業部長だけは、先代社長の姿が出て来ると、こみ上げる涙を押さえることが出来ないといった様子だった。
さて、啓太郎は技術提携のため近々渡米する予定である。旅行準備の買い物のため、啓太郎はその日、妻厚子と同伴で買物に出掛けねばならない。ところが彼はやむを得ぬゴルフ大会があると偽って、この買い物の同伴を秘書の長谷川に命じ、自分は新橋芸者梅千代の元へ出掛けた。しかし、その日の昼下り、梅千代と一緒の啓太郎は長谷川と一緒の厚子と街でバッタリ鉢合せ。梅千代の買物包を持たされていた啓太郎は、とっさの機転で厚子に向かい、買物包をゴルフの賞品だと言ってゴマかした。彼はにわかに方向転換して夫人の後に従い一路帰宅。
こんな具合でともかくも啓太郎は、無事羽田を出発し米国に向かった。留守中の社長代理には、ヨネ未亡人が8ミリ映写会で泣いていた営業部長大場を指名した。途端に長谷川は社外の雑用から一切解放され、手持無沙汰になってしまった。
やがて啓太郎が技術提携の目処を立て、アメリカから帰って来た。彼の目的が達せられたので、提携先を招待して祝賀パーティーを開催。その席で、酔った啓太郎が池田経理部長とともに、炭坑節を踊ったが、それは見ていた先方の社長夫人が退席するような品のない内容だった。トメ子がこの撮影の好材料を見逃すことなく、そのフィルムが未亡人ヨネ会長の元で映写され、会長が激怒した。たちまち啓太郎は系列の福原商事ニューヨーク支店長を命じられ、大場が正式に福富電機工業三代目社長に就任することになった。
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